プラズマ式排ガス処理装置のメリットとは?従来技術との比較
プラズマ式排ガス処理装置は、熱プラズマを利用して有害ガスを効率的に分解する技術で、従来より少ない電力と水で処理が可能です。低コストで環境負荷を低減できるため、今後の導入が期待されています。
目次
プラズマ熱を用いたプラズマ式排ガス処理装置
プラズマ式排ガス処理装置は、排ガスを効率よく処理するために熱プラズマを利用する技術です。これにより、従来より少ない電気や水で有毒ガスの分解が可能となり、今後さらに注目される装置です。
◇プラズマとは
プラズマとは、物質が高温になり、原子が電離して自由電子と陽イオンが分かれた状態です。物質は一般的に、固体、液体、気体の順に状態が変化しますが、気体の先にさらに「プラズマ」という状態があります。これは、非常に高温で物質が電離して、粒子が自由に動くようになった不安定な状態です。
物質の原子は、陽子と中性子からなる原子核の周りを電子が回っている状態で安定しています。固体、液体、気体に変化しても、原子自体は安定した状態を保ちます。しかし、温度が非常に高くなると、原子内のエネルギーが増大し、電子と陽イオンが分かれます。この状態が「電離」と呼ばれ、電磁波の影響を受けながら粒子が集団で高速移動します。
この電離が発生した状態が「プラズマ」と呼ばれます。プラズマは、しばしば光を放射しながら安定した状態に戻ろうとします。プラズマは金属や樹脂の表面処理や蛍光灯など、さまざまな用途で利用されており、雷やオーロラ、太陽風など自然現象にも関与しています。
また、プラズマには熱プラズマと非熱プラズマという種類があります。熱プラズマはすべての粒子が高温の状態であり、溶接や核融合などに利用されます。非熱プラズマは電子のみが高温で、半導体の製造などで利用されます。プラズマ式排ガス処理装置では、主に熱プラズマが使用されています。
◇プラズマ式排ガス処理装置とは
プラズマ式排ガス処理装置は、マイクロ放電やRF放電、アーク放電を利用して熱プラズマを発生させ、その力で有毒ガスを分解・無毒化する装置です。新しい技術であるため、まだ事例は少ないものの、他の排ガス処理装置と比べて必要な電気や水が少なく、今後の活躍が期待されています。
従来式の課題とプラズマ式の利点
従来式の排ガス処理装置には高コストの問題があり、広く普及するのが難しいという課題がありました。しかし、地球温暖化を加速させるPFC(Perfluoro Compounds)の排出削減が急務となり、コストの低い新しい排ガス処理技術が求められるようになりました。
◇従来式の課題
従来の排ガス処理装置は、設備や運用に高いコストがかかるため、普及が進みませんでした。特に、半導体の製造で使用されるPFC(例えばC2F5など)は大気中で長期間残り、温室効果を引き起こし、地球温暖化を進めてしまいます。
国際的な気候変動対策としてPFCが温室効果ガスに追加され、日本でも半導体業界が排出削減を進めていますが、PFCの排出量は依然として増加しており、削減は進んでいません。
このような背景から、日本の温室効果ガス削減目標を達成し、地球環境を守るためには、PFCを効果的に分解できる排ガス処理装置が必要とされています。しかし、従来式の装置は高コストであり、中小規模の施設には導入が難しいという問題があります。
◇プラズマ式の特徴と利点
この課題を解決したのが、プラズマ式排ガス処理装置です。プラズマ式の装置は、従来の装置に比べて設備コストが低く注目されていますが、これまで多くの電力を必要とするため、実用化には至っていませんでした。しかし、ラジカルインジェクション法という新しい技術の登場により、少ない電力で有毒ガスを効率的に分解できるようになり、この問題は解消されました。
現在のプラズマ式排ガス処理装置は、電気と冷却水を主に使用し、有毒ガスの分解能力が非常に高いと評価されています。さらに、必要な電力や水の量が従来の装置よりも少なく、設備コストやランニングコストも低いため、今後の導入が期待されています。
プラズマ式排ガス処理システムの仕組み
マイクロ波を利用したプラズマ式排ガス処理システムは、前処理、プラズマ発生、反応、冷却の4部構成で、半導体製造排ガスを効率的に分解し、環境に優しい処理を実現します。
◇構成と仕組み
プラズマ式排ガス処理システムの一例として、2.45 GHzのマイクロ波を利用した空洞共振器方式の装置があります。このシステムは、前処理部、プラズマ発生部、反応部、ガス冷却器の4つの主要部分で構成されており、半導体製造装置から排出される有害ガスの処理に使用されます。
まず、排ガスはフィルターと前処理スクラバーを通して、粉体やSiFなどの酸性ガスが除去されます。次に、処理されたガスは空洞共振器内の石英管に導入され、マイクロ波がマグネトロンから生成され、空洞共振器を通じてガスに伝わります。この過程で強い電界が発生し、ガス中の有害成分が分解されます。特に、1%程度含まれるPFC(パーフルオロ化合物)は、反応管内で水分と反応し、CO2、SO2、HFに変換されます。
さらに、ガス冷却器によって高温のガスが冷却され、副生成物であるHFはスプレー水に吸収されて酸廃水として除去されます。これにより、環境に優しい排ガス処理が実現されます。このシステムの特徴は、主に電気と冷却水を使用し、他の処理装置に比べて低コストで運用できる点です。小流量の処理では、燃焼式接地電極を使用して高電圧を印加し、プラズマを生成します。この技術により、効率的な有害ガス分解が可能となり、環境負荷を大幅に低減することができます。
大気圧プラズマ式排ガス処理装置を製造する大陽日酸
大陽日酸はガス供給から排出まで一貫した体制で、顧客に最適な設備やシステムを提供します。新たに開発した大気圧プラズマ式排ガス処理装置は、分解が難しいガスに優れた効果を発揮します。
◇大陽日酸とは
大陽日酸は、ガスの供給から排出まで一貫した体制を確立しており、その技術力を活かして最適なプランニングを提供しています。茨城県つくば市や山梨県北杜市ではガス供給の研究を行い、福島県会津若松市や神奈川県川崎市では、供給装置や精製装置、排ガス処理装置を製造しています。これにより、ガス供給から排出までのすべての工程を自社で完結する体制を整えています。お客様のニーズに応じた設備やシステムの開発やカスタマイズが可能です。
さらに、大陽日酸は全国に70カ所以上の事業所や営業所を展開し、配管や施工を自社および提携会社で行っています。アフターフォローも充実しており、緊急時には迅速な対応が期待できます。このような体制と高い技術力により、顧客満足度の高いサービスを提供しています。
◇大気圧プラズマ式排ガス処理装置を開発
大陽日酸は、これまで乾式や燃焼式の排ガス処理装置に力を入れていましたが、新たに大気圧プラズマ式排ガス処理装置を開発しました。この装置は、CF4など分解が難しいガスに対して優れた分解能力を持ち、環境に配慮した処理を実現します。装置は幅900mm、奥行900mm、高さ1,600mmのコンパクトサイズで、新規設置が簡単であるだけでなく、既存の排ガス処理装置の交換にも適しています。
さらに、このプラズマ式排ガス処理装置は、冷却水と電気のみを主なエネルギー源としており、コストパフォーマンスに優れています。これにより、運用コストを抑えつつ、効率的な排ガス処理を実現しています。
プラズマ式排ガス処理装置は、熱プラズマを活用して有害ガスを効率的に分解する技術で、従来よりも少ない電力と水で有毒ガスの処理が可能です。今後、この装置の需要はさらに高まると期待されています。
プラズマは、物質が高温になり、原子が電離して自由電子と陽イオンが分かれた状態を指します。気体状態の先に位置し、非常に高温で不安定な状態です。プラズマは光を放射しながら安定を試み、金属や樹脂の表面処理、蛍光灯、雷やオーロラなどの自然現象にも関与しています。プラズマには熱プラズマと非熱プラズマがあり、熱プラズマは溶接や核融合、非熱プラズマは半導体製造などで利用されます。
プラズマ式排ガス処理装置は、マイクロ放電やRF放電、アーク放電を利用して熱プラズマを発生させ、これで有毒ガスを分解する装置です。新しい技術で、他の排ガス処理装置より少ない電力と水で処理が可能です。従来の排ガス処理装置は高コストで普及が進んでいませんでしたが、地球温暖化を進めるPFCの排出削減が求められ、新たな低コスト技術が注目されています。
従来の排ガス処理装置は、高コストのため広く普及していませんでした。特に、半導体製造で使用されるPFCは温室効果ガスとして問題視され、削減が急務です。日本でもPFCの排出削減が進められていますが、依然として削減が難しい状況です。これに対して、プラズマ式排ガス処理装置は、少ない電力で高効率な分解が可能となり、今後の導入が期待されています。
プラズマ式排ガス処理装置は、従来よりも低コストで運用でき、設備やランニングコストも抑えられるため、導入が進むと考えられています。また、冷却水と電気のみを使用し、有毒ガスの分解能力が非常に高いことから、環境負荷の低減にも貢献します。