フレアスタックとは?可燃性ガスを安全処理する設備
プラントでの可燃性ガス処理には、フレア設備が不可欠です。フレアスタックで高所燃焼を行い、安全性を確保します。システムにはガス集積や液体除去、圧力緩和を行う装置が含まれ、緊急時の対応力を高めるため、設備能力や運転管理体制の適正化が重要です。
目次
フレアスタックとは?プラント設備における必要性

工業プラントや石油精製所などの大規模施設では、操業中に必ず余剰ガスが発生します。これらのガスには可燃性や毒性を持つものも多く、放置すれば爆発や環境汚染といった重大なリスクを招きかねません。そこで欠かせない設備が「フレアスタック」となります。
◇フレアスタックとは

フレアスタックとは、石油精製所や天然ガス処理施設、化学プラントなどに設置されている、高い煙突状の設備のことです。これらの施設では生産や処理の過程で可燃性ガスや有毒ガスといった余剰ガス(オフガス)が発生します。
もしこれをそのまま大気中に放出すれば、環境汚染や爆発事故の危険につながるため、フレアスタックへ導いて燃焼させることで無害化します。
フレアガスの主な成分と環境への影響
フレアスタックで燃焼処理されるフレアガスには、可燃性ガスや酸性ガスなどさまざまな成分が含まれています。これらのガスは燃焼によって分解・処理されますが、成分によっては環境や設備へ影響を及ぼす可能性があります。主な成分と環境への影響は次のとおりです。
| 成分 | 主な特徴 | 環境への影響 |
| 硫化水素(H₂S) | 強い腐食性と刺激臭を持つガス | 大気汚染や悪臭の原因となる可能性 |
| 水素(H₂) | 非常に燃えやすい可燃性ガス | 燃焼により水蒸気へ変化し、環境負荷は比較的小さい |
| 窒素(N₂) | 空気中に多く含まれる不活性ガス | 環境への影響はほとんどない |
| 酸素(O₂) | 燃焼を助ける酸化性ガス | 直接的な環境影響は小さい |
| 一酸化炭素(CO) | 不完全燃焼で発生する有毒ガス | 大気汚染や人体への健康リスク |
| 二酸化炭素(CO₂) | 炭化水素の燃焼で発生 | 温室効果ガスとして地球温暖化に関係 |
| メタン(CH₄) | 可燃性の炭化水素 | 未燃焼の場合は強い温室効果ガス |
| エタン(C₂H₆) | 炭化水素ガスの一種 | 燃焼によりCO₂へ変化 |
| エチレン(C₂H₄) | 化学原料にも使われるガス | 大気中では光化学反応に関与 |
| プロパン(C₃H₈) | LPGの主成分の一つ | 燃焼によりCO₂と水へ変化 |
| プロピレン(C₃H₆) | 石油化学原料として利用 | 未燃焼時は大気汚染物質の原因 |
特に硫化水素など有毒ガスを含む場合は、十分安全な距離に設置したフレアスタックで処理することが不可欠です。
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ベントスタックとの違い
フレアスタックとベントスタックの違い
ガスを大気へ放出する設備には「フレアスタック」と「ベントスタック」がありますが、両者にはガスの処理方法に大きな違いがあります。
フレアスタックは、排出されるガスを必ず燃焼させて処理する設備です。可燃性ガスや有害ガスを高温で燃焼させることで、安全に無害化・減量化する役割を担っています。
一方、ベントスタック(ガス放散塔)は、ガスを燃焼させずにそのまま大気へ放出する設備です。プラント設備の圧力が上昇した際などに、安全弁を通してガスを排出する仕組みになっています。
ベントスタックでは、ガスをそのまま放出するため、事前に安全対策を行う必要があります。主な対策は次のとおりです。
- 可燃性ガスは爆発下限界以下になるよう濃度を調整する
- 毒性ガスは許容濃度以下になるよう処理する
- 必要に応じて希釈ガスを混合する
例えば、メタン(CH₄)などの可燃性ガスを放出する場合には、窒素(N₂)などの不燃性ガスを混合して濃度を下げることで、発火や爆発のリスクを防止します。
このように、
- フレアスタック:燃焼処理して排出する設備
- ベントスタック:安全基準まで濃度を下げて放出する設備
という違いがあります。プラントの安全運転や環境対策の観点から、ガスの性質や処理目的に応じて使い分けられています。
◇フレアスタックの役割

フレアスタックの最大の役割は、施設の安全と環境保護を両立させる点にあります。まず、安全面では、プラントの稼働中や地震・停電などの緊急停止時に発生する余剰ガスを逃がすことで、配管やタンクの内圧が危険水準に達するのを防ぎます。万が一ガスが行き場を失えば、爆発や設備の破損につながる恐れがありますが、フレアスタックがあることで圧力を調整し、事故を未然に防ぐことが可能です。
また、環境保護の面でも重要な役割を担っています。精製や処理の過程で発生する硫化水素や一酸化炭素などの有害ガスを、そのまま大気中に放出すると環境汚染や人体への悪影響を引き起こすおそれがあります。そこで、フレアスタックではこれらのガスを高温で燃焼させることで無害化または低害化し、大気中に拡散させることで環境への負荷を最小限に抑えることが可能です。
◇プラント設備における必要性

プラントの運転では、必然的にさまざまな可燃性ガスが発生します。特に化学プラントのように多様な化学物質を扱う施設では、毒性や腐食性を持つガスが副次的に発生することも少なくありません。設計段階ではガスの再利用や発生量の削減が検討されますが、完全にゼロにすることは極めて困難です。
そのため、余剰ガスは適切な方法でプラント外に排出する必要があります。性状が比較的無害なガスであればベントスタックから直接大気放出される場合もありますが、毒性・腐食性・悪臭を伴う可燃性ガスは安全上・環境上の影響が大きいため、そのまま排出することは許されません。
そこで必要となるのがフレアスタックです。フレアスタックでは、これらのガスを高温で燃焼処理し、爆発性や毒性を低減してから大気中に拡散させます。燃料として利用できない熱量の低いガスや、経済性・技術的制約から再利用が難しいガスも対象となります。このように、フレア設備はプラントの安全確保と環境保全を両立させる不可欠なシステムです。
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可燃性ガスの特徴と危険性

工場やプラントなどで扱われる可燃性ガスは、日常的に利用される一方で、条件がそろうと爆発や火災といった重大事故につながる危険性を持っています。ガスの種類によって爆発範囲や特性が異なり、取り扱いを誤れば人体や環境にも大きな影響を及ぼします。
◇可燃性ガスの基本的な性質

可燃性ガスとは、空気や酸素などの支燃性ガスと混合し、一定濃度に達した状態で着火源に触れると燃焼・爆発を引き起こす可能性を持つ気体のことです。単独では燃えにくいものが多い一方、条件が整うと極めて危険な性質を示します。
代表的な性質には、燃焼性、自己分解性、発火性の三つが挙げられます。燃焼性は着火すると火炎を伴って燃える性質、自己分解性はアセチレンなどのように衝撃や光によって爆発的に分解する性質、発火性はホスフィンのように空気中で自然に発火する性質です。
日本の容器保安規則では、爆発下限界が10%以下、または爆発範囲が20%以上のガスを可燃性ガスと定義しており、濃度範囲によって爆発の危険度が異なります。わずかな量でも条件が揃えば大事故につながるため、取り扱いには厳重な管理と十分な安全対策が必要です。
◇主要な可燃性ガスの種類

可燃性ガスにはさまざまな種類があり、それぞれ燃えやすさや爆発の範囲、そして人体への影響が異なります。代表的なものには、水素(H₂)、メタン(CH₄)、エタン(C₂H₆)、プロパン(C₃H₈)、一酸化炭素(CO)、エタノール(C₂H₅OH)などです。
たとえば水素は爆発下限界が4.0vol%、上限が75vol%と非常に広い範囲を持ち、爆発等級も最も危険度が高い「3等級」に分類されます。これは、わずかなきっかけでも爆発につながる危険性が高いことを意味します。
一方、メタンやプロパンは比較的爆発範囲が狭いものの、日常的に利用される機会が多く、取り扱いを誤れば火災や爆発事故につながりかねません。また、一酸化炭素は燃焼性に加えて強い毒性を持ち、わずか25ppm以上で健康被害を引き起こすため、特に厳しい管理が必要です。
エタノールは消毒や燃料など幅広く使われますが、短時間でも高濃度にさらされると人体に影響が出るため、暴露限界(TLV-STEL)が設定されています。このように、可燃性ガスの特性を正しく理解し、爆発防止だけでなく作業員の健康管理を徹底することが、安全なプラント運転が必要です。
◇可燃性ガスの危険性と安全対策のポイント

可燃性ガスを取り扱う際には、その性質を正しく理解することが欠かせません。可燃性ガスは「燃焼(爆発)範囲の濃度に達すること」「酸素が存在すること」「着火源に触れること」の三つの条件が揃ったときに、燃焼や爆発を引き起こします。
逆にいえば、いずれかの条件を取り除けば爆発は起こらないため、濃度管理や酸素遮断、着火源の排除といった対策を講じることで安全に取り扱うことが可能です。一方で、一酸化炭素のように毒性を持つガスは、極めて低い濃度でも人体に悪影響を及ぼすため、許容濃度を守ることが重要です。
こうしたガスを処理する手段の一つが「燃焼式排気装置」です。代表的なものに蓄熱式酸化脱臭装置(RTO)があり、800℃以上の高温で有害物質を酸化分解し、無害化して排出します。高効率で有害ガスを除去でき、さらに熱回収率が85%以上と経済的である点が大きなメリットです。
また、大気汚染防止法に基づくVOC排出規制への対応にも役立ちます。フレアスタックは燃焼式排気装置の一種で、可燃性ガスを高温で燃焼させることで爆発のリスクを防ぎ、同時に有害成分を分解して環境への影響を最小限に抑えることが可能です。そのため、可燃性ガスや毒性ガスを安全に管理するには、濃度の制御に加えて燃焼式排気装置の導入が欠かせない対策といえます。
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フレア設備(ガス移送処理設備)の種類

プラントでは、製造工程や緊急時に発生する可燃性ガスを安全に処理するため、フレア設備が設置されています。フレア設備は、装置内の圧力上昇を抑制し、ガスを安全に燃焼させる仕組みを持つ重要な設備です。
フレア設備は、異常時に作動する「緊急移送処理設備」としても機能し、ガスを排出する前に圧力を調整する役割も果たしています。
◇ノックアウトドラム

ノックアウトドラムは、フレア設備に送られてくるガス中に含まれる液体成分を分離する装置です。
ガスの中には、液体の飛沫や不純物が含まれていることが多く、これらの液体がフレアスタックに送られると燃焼が不安定になったり、装置の故障を引き起こしたりする可能性があります。
ノックアウトドラムでは、ガスがドラム内で減速され、重い液体成分が重力によって底部に沈殿します。液体はドラムの下部にたまり、定期的に排出されます。ドラム下部に液体がたまり、上部に残ったガスだけがフレアスタックへと送られるため、安定した燃焼が可能です。
◇シールドラム
シールドラムは、フレア設備の中でも、排出されるガスの中に含まれる異物や液体成分を除去するための装置です。ノックアウトドラムと似た役割を果たしますが、シールドラムはガスの成分や圧力の変動が大きい場合に特に効果的です。
緊急時にフレア設備に大量のガスが一気に流入した場合、ガスの圧力が急激に変動しますが、シールドラムはこの急激な圧力変動を吸収し、フレアスタックに送られるガスの流れを安定させます。
シールドラムは、急激な圧力変動を緩和するバッファーの役割を果たし、フレアシステムの安全性を高めます。これにより、燃焼の安定性が確保され、ガスの燃焼が不安定になるリスクを低減できます。
特に、大量のガスが一気に流れ込む異常時には、シールドラムが不可欠な装置です。
◇フレアヘッダー
フレアヘッダーは、プラント内の複数の設備から排出されるガスを一つの経路に集め、フレアスタックへ送り込むための配管です。
ヘッダーは、各設備の排出口とフレア設備を結ぶパイプラインであり、プラント全体のガス処理を効率的に行うために必要なインフラです。
フレアヘッダーの設計は、流入するガスの量や圧力、温度を考慮して行われます。ガスの流れがスムーズでなければ、ガスが逆流したり、流れが乱れて燃焼が不安定になったりするリスクがあります。
特に、大量のガスが一気に排出される異常時には、フレアヘッダーの容量が不足すると、ガスの流れが詰まる可能性があるため、フレアヘッダーのサイズや配管のレイアウトは、プラントの設計段階で慎重に検討されます。
フレアヘッダーは、通常時の排ガス処理だけでなく、緊急時の大量のガス処理にも対応する必要があるため、設計には十分な余裕が必要です。
◇フレアスタック

フレアスタックは、フレア設備の中で、最も目に見える部分であり、プラントの煙突のような構造物です。
フレアスタックは、排出された可燃性ガスを高い場所で燃焼させ、無害化して大気中に放出するための設備です。フレアスタックの先端には点火装置が取り付けられており、排出されたガスが自動的に点火されます。
フレアスタックの設計では、燃焼の安定性が重視されます。風の影響を受けにくい高さや形状が選ばれ、燃焼が安定するように設計されています。
フレアスタックの高さは、ガスの種類や燃焼時に発生する熱量、大気への影響を考慮して決定され、高い位置で燃焼させることで、地上の作業員や周辺の環境への影響を最小限に抑えることが可能です。
フレアスタックは、通常時に使用される常用フレアと、緊急時にのみ使用される緊急フレアの2種類があります。
緊急フレアは、異常時に発生する大量の可燃性ガスを処理するため、短時間での大量燃焼が求められます。フレアスタックの設計では、大量のガスが一度に流入しても安定した燃焼が維持できるよう、ガスの流れの調整や点火の自動化が行われています。
フレアスタックの構造

フレアスタックは、プラントから排出される余剰ガスや可燃性ガスを安全に燃焼処理するための設備であり、その構造は複数の装置によって成り立っているのです。フレアバーナーを中心に、点火や消煙、逆火防止の各装置を組み合わせることで、安全かつ安定した運転を実現しています。
◇フレアバーナー

フレアバーナーは、フレアスタックの最上部に設置され、余剰ガスを安全かつ効率的に燃焼させる中核的装置です。材質には高温環境に耐えるため、SS310、インコロイ、インコネルといった耐熱金属が用いられ、円筒型の構造が一般的です。
ガス処理量に応じてバーナー長は延長され、20インチ以上の大口径タイプでは、上部1〜2mを高純度アルミナキャスタブルでライニングして耐久性を高めます。また、直径に応じて設置するパイロットバーナーの数が決まり、小型では2〜3基、大型では4基以上配置されます。これにより、ガス量が変動しても安定した燃焼を維持でき、常に安全性を確保できる仕組です。
◇パイロットバーナー
パイロットバーナーはフレアバーナーの周囲に等間隔で設置され、常時点火を維持する役割を担う装置です。多くは予混合・常時着火型であり、プラント運転が不安定な状況でも確実に燃焼を継続できるよう設計されています。
そのため使用する燃料ガスは、下位発熱量(LHV)が10,000 kcal/Nm³以上と高熱量で、性状が安定していることが条件となります。天然ガスやLPGを利用するプラントでは、これらを分岐させてパイロット専用に供給する仕組みが一般的です。安定した火源を維持することで、主バーナーでのガス放出時に即時着火を可能にし、未燃ガスの拡散や爆発リスクを防ぐ重要な役割を果たしています。
◇消煙装置
フレアスタックでの燃焼時には、不完全燃焼によって炭化水素の未燃ガスや煤が発生し、黒煙となることがあります。特に重質炭化水素を扱うプラントでは黒煙が生じやすく、景観を損なうだけでなく、大気汚染防止法などの環境規制に抵触する可能性があります。そこで設置されるのが消煙装置です。
これはフレアバーナー周辺に蒸気や空気を吹き込むことで燃焼を促進し、完全燃焼に近づける仕組みです。燃焼効率を高めることで煤の発生を抑え、無煙燃焼を実現します。結果として、環境負荷を大幅に軽減できるほか、施設の稼働イメージを保ち、周辺地域への影響を最小限に抑える重要な設備となっています。
◇逆火防止装置
逆火防止装置は、フレアバーナー下部に設置され、炎が配管内部へ逆流するのを防ぐ装置です。特に腐食性ガスや低温ガスを処理するフレア設備では、シールドラムの代替として不可欠な装置とされています。少量のパージガス(シールガス)を常時流すことで、外部の空気がスタック内部へ侵入するのを防ぎ、ガスと空気の混合による爆発リスクを回避することが可能です。
代表的な形式にはラビリンス型やバッフル型があり、それぞれ空気流入を機械的に阻害する構造を備えています。これにより、ガスの性状が不安定な状況や長期運転時にも安定した安全性が確保され、フレア設備全体の信頼性を高める役割を果たしています。
◇パイロットバーナー点火装置
パイロットバーナー点火装置は、フレアバーナーを確実に着火させるための仕組みで、主にFFG(Flame Front Generator)が用いられます。FFGは、空気と燃料ガスを一定比率で混合し、圧力制御弁やオリフィス、点火プラグによって着火させ、その炎をパイロットバーナーに伝える構造です。
設置位置は、フレアバーナーの状態を直接目視できる場所が望ましく、多くの場合はプロセスエリアとの境界付近に設置されます。これにより、運転員が点火状況を確認しやすく、緊急時にも迅速な対応が可能です。パイロットバーナー点火装置は、フレア設備の安全稼働を根本から支える不可欠な機構となっています。
緊急移送処理設備の能力調査

画像出典:フォトAC
神奈川県では、平成29年度に石油コンビナート事業所を対象とした緊急移送処理設備の能力および運転管理に関する実態調査が行われました。
この調査は、プラントで発生する可燃性ガスを安全に処理するための設備が十分な機能を果たしているかを確認し、事業所の管理体制を評価するために実施されました。
出典元:神奈川県
資料:石油コンビナート事業所における緊急移送設備の能力 及び運転管理に係る実態調査結果
◇調査の目的

調査の目的は、異常時に発生する可燃性ガスを安全に処理するために必要な緊急移送処理設備の能力や、運転管理の実態を把握することです。可燃性ガスはプラントの異常時に大量に排出される可能性があるため、設備が適切に機能しなければ火災や爆発のリスクが高まります。
調査では設備の処理能力が十分か、運転管理が適切に行われているかを確認し、必要な改善点を明確にすることが求められました。
◇調査の概要

この調査は、神奈川県内にある石油コンビナートの事業所を対象に行われました。
調査内容は、緊急移送処理設備の設備能力、運転管理体制、設備の稼働状況の確認を含みます。
具体的には、各事業所が保有するフレア設備の設置状況や処理能力、非常時のガス排出処理の方法、設備の点検頻度や運転員の訓練状況が調査されました。
調査は、事業所へのヒアリングや資料の提出を通じて行われ、現地での設備の確認も行われました。
◇調査の結果
調査の結果、いくつかの課題が明らかになりました。一部の事業所では、想定される緊急時のガス排出量に対して、フレア設備の処理能力が不十分であることが確認されました。
処理能力が足りないため、ガスが適切に処理されず、事故が発生するリスクが指摘されました。特に、大量のガスが一度に排出される異常事態では、処理が追いつかない可能性があるため、設備能力の増強が求められました。
運転管理体制に関しては、運転手順書が不十分であったり、点検の頻度がばらついていたりする事業所が見受けられました。これにより、緊急時に適切な対応が取れない可能性があると判断され、管理体制の見直しが推奨されました。
また、運転員の訓練状況については、緊急時の対応訓練が十分に行われていないケースが確認されたため、異常時にオペレーターが正しい操作を行えない可能性があることから、訓練の実施や操作手順の明確化が求められました。
この調査を通して、緊急移送処理設備の処理能力の向上や、運転管理体制の強化が必要であることが明らかになりました。今後は、事業所が調査結果を踏まえ、設備の能力向上や運転員の訓練体制の整備を行うことが求められています。
設備の能力向上や訓練体制の整備により、火災や爆発などのリスクを低減し、より安全なプラント運用が可能です。
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排ガスを安全に処理するために必要となる設備

工場やプラント、焼却施設などでは、燃焼や化学反応の過程でさまざまな排ガスが発生します。排ガスには、ばいじん(粉じん)、酸性ガス、窒素酸化物(NOx)、ダイオキシン類など、環境や人体に影響を与える物質が含まれる場合があります。そのため、排ガスをそのまま大気へ放出するのではなく、専用の排ガス処理設備によって有害成分を除去してから排出することが重要です。
排ガス処理では、対象となる物質ごとに異なる装置や処理方法が使用されます。主な設備は次のとおりです。
主な排ガス処理装置の種類
排ガス処理設備は、対象となる物質に応じて複数の方式が存在します。代表的な装置は次のとおりです。
| 処理対象 | 装置の種類 | 主な装置例 |
| ばいじん | 集じん装置 | 重力集じん装置、慣性力集じん装置、遠心力集じん装置、洗浄集じん装置、電気集じん装置、ろ過式集じん装置 |
| 有害ガス | 有害ガス処理装置 | 乾式洗浄装置、湿式洗浄装置、触媒燃焼装置、活性炭吸着装置 |
集じん装置
工場やプラント、焼却施設などでは、燃焼や加工工程の過程で粉じん(ばいじん)が発生します。これらの粒子状物質をそのまま大気中へ排出すると、大気汚染や設備トラブルの原因になるため、排ガス中の粉じんを除去する集じん装置が設置されています。
集じん装置にはさまざまな方式があり、粉じんの粒径や発生量、処理対象ガスの性質などに応じて使い分けられます。代表的な集じん装置は次のとおりです。
重力集塵機
重力集じん機は、粒子の自然沈降(重力)を利用して粉じんを分離する最も基本的な集じん装置です。ダクトの途中に沈降室と呼ばれる広い空間を設け、粉じんを含んだガスの流速を急激に低下させることで、粒子を重力によって落下させて回収します。
粒子の沈降速度は粒径の二乗にほぼ比例するため、粒径の大きい粉じんは比較的容易に分離できます。一方で、微細な粒子はガスの流れに乗ってそのまま排出されることがあります。
この特徴から、重力集じん機は次のような用途で使用されます。
- 粒径の大きい粉じんの除去
- 無機系粉じんの処理
- 他の集じん装置の前段処理
構造がシンプルで設備コストも低いため、一次集じん設備として利用されることが多い方式です。
慣性力集塵機
慣性力集じん機は、粉じん粒子の慣性力を利用してガス流から分離する装置です。装置内部に衝突板などの障害物を設け、含じんガスを衝突させたり流れの方向を急激に変えたりすることで、粒子をガス流から分離します。
粉じん粒子は質量を持つため、ガスの流れが急に方向を変えても同じように曲がることができません。この性質を利用して、粒子を障害物へ衝突させて捕集します。
主な特徴は次のとおりです。
- 比較的大きな粒子の除去に適している
- 構造がシンプルでメンテナンスが容易
- 粉じん濃度が高い場合の一次処理に適している
重力式と同様に、後段の集じん装置の負荷を軽減する前処理設備として広く利用されています。
遠心力(サイクロン)集塵機
遠心力集じん機は、一般的にサイクロン集じん機と呼ばれる装置で、円筒形の装置内でガスを旋回させることで遠心力を発生させ、粉じんを分離します。
装置の内部では次のような流れが起こります。
- 含じんガスが円筒の上部から接線方向に流入
- ガスが旋回しながら下部へ移動
- 粉じんが遠心力によって外壁に押し付けられる
- 粉じんが壁面を伝って下部の集じん室へ落下
- 粉じんを除去したガスが中央のダクトから排出
サイクロンは下部が漏斗状になっている独特の形状をしており、この構造によって粉じんを効率よく回収します。
主な特徴は次のとおりです。
- 比較的大きな粒子の分離に適している
- 構造が簡単で耐久性が高い
- 高温ガスにも対応しやすい
そのため、ボイラー排ガスや粉体工程など多くの産業分野で広く使用されています。
湿式集塵機
湿式集じん機は、水などの液体を利用して粉じんを捕集する装置です。含じんガスを水中に通過させたり、水を霧状に噴霧してガスと接触させたりすることで、粉じんを液滴に付着させて回収します。
装置内部では、ガスが塔の下部から入り、充填材の表面に形成された水膜と接触します。この水膜によって粉じんが捕集され、液体とともに装置下部へ回収されます。
湿式集じん機には次のような特徴があります。
- 微細な粒子を比較的効率よく捕集できる
- ガス中の有害成分も同時に吸収できる
- ガス洗浄装置としても利用できる
このため、粉じん除去と同時にガス処理を行う設備として利用されることもあります。
ろ過式集じん機(バグフィルター)
ろ過式集じん機は、ろ布(フィルター)を利用して粉じんを捕集する装置です。主に化学繊維やガラス繊維などで作られた袋状のフィルター(バグ)を使用するため、「バグフィルター」とも呼ばれます。
含じんガスはフィルターを通過する際に粉じんが捕集され、清浄化されたガスのみが排出されます。捕集された粉じんは、次の方法で定期的に除去されます。
- 圧縮空気を吹き込んで払い落とす
- ガスの流れを逆転させて除去する
この方式は非常に高い集じん効率を持つため、大型工場や焼却施設などの最終集じん装置として広く採用されています。
電気集塵装置
電気集じん装置は、静電気の力を利用して微粒子を捕集する装置です。装置内の電極間に高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、粉じん粒子を帯電させます。その後、帯電した粒子を静電引力によって集じん極へ吸着させて回収します。
この方式の特徴は次のとおりです。
- 微細粒子やオイルミストの捕集に優れている
- 大量の排ガス処理に適している
- 圧力損失が比較的小さい
電気集じん装置には乾式と湿式のタイプがあり、用途や処理対象に応じて使い分けられます。火力発電所や製鉄所など、大規模な排ガス処理設備で多く採用されている方式です。
有害ガス処理装置
工場やプラントでは、燃焼工程や化学反応の過程でさまざまな有害ガスが発生します。代表的なものには、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)、悪臭成分などがあります。これらのガスをそのまま大気中に排出すると、大気汚染や周辺環境への影響につながるため、排出前に専用の装置で処理する必要があります。
有害ガス処理装置は、化学反応や吸収、燃焼などの原理を利用して有害成分を除去・無害化する設備です。処理対象となるガスの種類や濃度、排ガス量に応じて複数の方式が使い分けられます。
乾式洗浄装置
乾式洗浄装置は、処理剤を用いた化学反応や吸着によって有害ガスを除去する装置です。排ガスに処理剤を添加し、ガス中の有害成分と反応させることで無害な化合物へ変化させます。その後、反応生成物を処理剤へ吸着させることでガスから分離します。
主な特徴は次のとおりです。
- 加熱設備が不要で比較的低コストで運用できる
- 構造が比較的シンプルで設備がコンパクト
- 酸性ガスなどの処理に適している
一方で、反応後の処理剤は産業廃棄物として処理する必要があるため、廃棄物処理の手間やコストが発生します。加熱分解方式や燃焼方式と異なり、副生成物の管理が必要になる点が特徴です。
湿式洗浄装置
湿式洗浄装置は、水や薬液を利用して有害ガスを吸収・除去する装置です。塔内で排ガスに水や薬液をシャワー状に噴霧し、ガスと接触させることで、有害成分を液体に溶かして取り除きます。
この方式の特徴は次のとおりです。
- 水溶性のガス成分を効率よく除去できる
- 装置構造が比較的シンプル
- 加熱設備が不要で運用コストを抑えやすい
一方で、有害ガスを吸収した排水や薬液の処理が必要になるため、水処理設備や排水管理が必要になります。また、処理するガス量が多い場合には装置が大型化しやすいという特徴もあります。
触媒燃焼装置
触媒燃焼装置は、排ガス中に含まれる可燃性物質や揮発性有機化合物(VOC)、悪臭成分などを触媒による酸化反応で分解・無害化する装置です。排ガスを触媒層に通し、触媒と空気中の酸素を利用して酸化反応を起こすことで、有害ガスを二酸化炭素(CO₂)や水(H₂O)などの無害な物質へ変換します。
この装置では、触媒の働きによって通常の燃焼よりも低温で反応が進むため、エネルギー効率が高い点が特徴です。主に次のようなガス処理に利用されています。
- 揮発性有機化合物(VOC)
- 悪臭ガス
- 可燃性ガス
- 窒素酸化物(NOx)の一部処理
触媒燃焼装置の主なメリットは次のとおりです。
- 燃料使用量が少なく運転コストを抑えられる
- 比較的低温で反応が進むため安全性が高い
- VOCや悪臭の除去に高い効果を発揮する
一方で、運用にあたっては次のような点にも注意が必要です。
- 運転開始時に暖機運転が必要
- 触媒の劣化により定期的な交換が必要
- 触媒交換費用が比較的高額になる場合がある
このような特徴から、触媒燃焼装置はVOC処理や脱臭設備として多くの工場やプラントで利用されています。
活性炭吸着装置
活性炭吸着装置は、吸着剤の表面に有害物質を取り込ませることで排ガスを浄化する装置です。排ガスを活性炭などの吸着材を充填したフィルター層に通過させることで、ガス中の有害物質を吸着して除去します。
この方式では、活性炭の微細な孔構造が大きな表面積を持つため、多くのガス成分を効率的に吸着することができます。主に次のような物質の除去に使用されます。
- ダイオキシン類(DXN)
- 硫黄酸化物(SOx)
- 水銀(Hg)
- 揮発性有機化合物(VOC)
- 悪臭成分
吸着材としては、次のような材料が使用されます。
- 活性炭
- ゼオライト
- シリカ系吸着材
また、有機ガス・酸性ガス・アルカリ性ガスなどに対応したフィルターを組み合わせることで、複数の有害ガスを同時に除去する複合処理も可能です。
活性炭吸着装置の主な特徴は次のとおりです。
- 微量の有害ガスの除去に優れている
- ダイオキシンや重金属の除去に効果的
- 比較的低温で処理が可能
一方で、吸着材が飽和すると交換や再生が必要になるため、吸着材の管理や交換コストが発生する点には注意が必要です。
優れた排ガス処理装置を提供しているメーカー3選
工場やプラントから排出されるガスには、悪臭やVOC(揮発性有機化合物)、さらには人体や環境に有害な成分が含まれることがあります。これらを適切に処理する排ガス処理装置は、安全性の確保や環境保全に欠かせません。
◇サンレー冷熱

サンレー冷熱は、創業80年の歴史を持つ燃焼技術のパイオニアとして、多彩な排ガス処理装置を提供しているメーカーです。悪臭やVOC(揮発性有機化合物)の処理、作業環境改善、近隣住民への配慮、省エネルギーや廃熱利用まで幅広い課題に対応できる点が強みです。
従来の燃焼式脱臭装置に加え、触媒燃焼式、濃縮式、パルスプラズマ方式など多様な技術を駆使し、最適な高効率・省エネルギーシステムを提案しています。製品ラインナップは、直接燃焼式脱臭装置や廃液燃焼処理装置、熱風発生装置など幅広く、用途や条件に合わせた柔軟な選択が可能です。
| 会社名 | サンレー冷熱株式会社 |
| 所在地 | 〒573-1132 大阪府枚方市招提田近3-25 |
| 電話番号 | 072-856-3221 |
| 公式ホームページ | https://www.sunray-r.co.jp/environment/ |
さらに、初期計画から設計・生産、保守管理まで一貫したサポート体制を整えており、大阪・東京を中心とした全国対応に加え、中国・韓国・台湾でもアフターサービスを提供。国内外で安心して利用できる体制を築いています。
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▼サンレー冷熱は充実したメンテナンス体制とアフターサービスを提供
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◇カンケンテクノ

カンケンテクノは、「大気環境保全装置」の製造・販売を通じて、半導体をはじめとする最先端テクノロジー分野で発生する有害ガスや、分解が難しいPFCガスの処理に取り組む企業です。国際的に広がる環境保護の流れの中で、持続可能な社会の実現に貢献することを使命としています。
主力事業である除害装置では、スクラバや熱酸化技術を活用した多彩な製品を展開しています。中でも、ヒータを熱源とする高効率除害装置「KT1000シリーズ」は、特許を取得した前後スクラバを備え、PE-CVDやLP-CVD工程における排ガス処理に最適です。
| 会社名 | カンケンテクノ株式会社 |
| 所在地 | 〒617-0833 京都府長岡京市神足太田30-2 |
| 電話番号 | 075-955-8823 |
| 公式ホームページ | https://www.kanken-techno.co.jp/ |
また、大気圧プラズマを用いた「KPLシリーズ」は、高温アークプラズマによってSF₆やCF₄といった難分解性ガスを効果的に分解除去できる点が特長です。さらに、KD・KW・KCシリーズなど幅広い製品を揃え、工程や用途に合わせた柔軟な提案を行っています。環境負荷の低減と技術革新を両立するカンケンテクノの取り組みは、世界的な環境課題の解決に直結しています。
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◇中外炉工業

中外炉工業は1945年の創業以来、独創的な技術を武器にサーモテック分野を牽引してきた企業です。「新しい価値の創造」を経営理念に掲げ、研究・設計力を最大の強みとして発展してきました。近年は気候変動や労働環境の変化といった社会課題を、新市場開拓や商品改善のチャンスと捉え、カーボンニュートラルに対応する製品や働きやすい職場づくりに積極的に取り組んでいます。
事業の一環として提供する大気浄化設備では、直燃式の低カロリーガス燃焼設備を展開。化学プラントや炭化設備から発生する副生ガスを安全に焼却しつつ有効利用できるのが特長です。同軸バーナ方式で安定した燃焼を実現し、低火炎温度による低NOx燃焼も可能です。
| 会社名 | 中外炉工業株式会社 |
| 所在地 | 〒541-0046 大阪府大阪市中央区平野町3-6-1 |
| 電話番号 | 06-6221-1251 |
| 公式ホームページ | https://chugai.co.jp/ |
さらに排ガスボイラーを用いた廃熱回収により、省エネルギーと経済性を両立しています。低圧ガスやタール分を含むガスにも対応でき、不完全燃焼を防止する構造を備えているため、環境保護と資源活用を同時に実現する設備を提供しています。

プラントにおける可燃性ガスの安全処理には、フレア設備が不可欠です。フレア設備は、異常時に発生するガスを燃焼させて安全に大気中へ放出する装置で、圧力を調整しながらガスを処理します。中心となるフレアスタックは自動点火機能を備え、高所で燃焼を行うことで安全性を確保します。
フレアシステムには、液体成分を除去するノックアウトドラムや急激な圧力変動を緩和するシールドラム、ガスを集めるフレアヘッダーも含まれます。緊急時の対応力が求められるため、設備の能力や運転管理体制の適正化が重要とされています。
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