フレアスタックとは?可燃性ガスを安全処理する設備
プラントでの可燃性ガス処理には、フレア設備が不可欠です。フレアスタックで高所燃焼を行い、安全性を確保します。システムにはガス集積や液体除去、圧力緩和を行う装置が含まれ、緊急時の対応力を高めるため、設備能力や運転管理体制の適正化が重要です。
目次
プラントにおける可燃性ガスを安全に処理する設備
プラントでは、製造工程や緊急時に発生する可燃性ガスを安全に処理するため、排ガス処理装置の一種であるフレア設備が設置されています。
フレア設備は緊急移送処理設備などと呼ばれることもあり、プラントの安全性を確保するために重要な役割を果たしており、異常時に可燃性ガスを適切に排出または分解する仕組みが整えられています。
フレア設備は、プラントから排出される可燃性ガスを燃焼させ、安全な状態で大気中に放出するための設備です。プラントの異常時には、装置内の圧力が上昇することがありますが、制御が困難になったガスをフレア設備に送ることで、圧力を低減しつつガスの安全な排出が可能です。
フレア設備の中心となるのは、煙突のような「フレアスタック」であり、排出された可燃性ガスはここで燃焼されます。フレアスタックの頂部には点火装置が設けられており、排出されたガスに自動的に点火します。
排出ガスに点火することで、未燃焼の可燃性ガスが大気中に漏れ出るのを防ぎます。
フレア設備(ガス移送処理設備)の種類
プラントでは、製造工程や緊急時に発生する可燃性ガスを安全に処理するため、フレア設備が設置されています。フレア設備は、装置内の圧力上昇を抑制し、ガスを安全に燃焼させる仕組みを持つ重要な設備です。
フレア設備は、異常時に作動する「緊急移送処理設備」としても機能し、ガスを排出する前に圧力を調整する役割も果たしています。
◇ノックアウトドラム
ノックアウトドラムは、フレア設備に送られてくるガス中に含まれる液体成分を分離する装置です。
ガスの中には、液体の飛沫や不純物が含まれていることが多く、これらの液体がフレアスタックに送られると燃焼が不安定になったり、装置の故障を引き起こしたりする可能性があります。
ノックアウトドラムでは、ガスがドラム内で減速され、重い液体成分が重力によって底部に沈殿します。液体はドラムの下部にたまり、定期的に排出されます。ドラム下部に液体がたまり、上部に残ったガスだけがフレアスタックへと送られるため、安定した燃焼が可能です。
◇シールドラム
シールドラムは、フレア設備の中でも、排出されるガスの中に含まれる異物や液体成分を除去するための装置です。ノックアウトドラムと似た役割を果たしますが、シールドラムはガスの成分や圧力の変動が大きい場合に特に効果的です。
緊急時にフレア設備に大量のガスが一気に流入した場合、ガスの圧力が急激に変動しますが、シールドラムはこの急激な圧力変動を吸収し、フレアスタックに送られるガスの流れを安定させます。
シールドラムは、急激な圧力変動を緩和するバッファーの役割を果たし、フレアシステムの安全性を高めます。これにより、燃焼の安定性が確保され、ガスの燃焼が不安定になるリスクを低減できます。
特に、大量のガスが一気に流れ込む異常時には、シールドラムが不可欠な装置です。
◇フレアヘッダー
フレアヘッダーは、プラント内の複数の設備から排出されるガスを一つの経路に集め、フレアスタックへ送り込むための配管です。
ヘッダーは、各設備の排出口とフレア設備を結ぶパイプラインであり、プラント全体のガス処理を効率的に行うために必要なインフラです。
フレアヘッダーの設計は、流入するガスの量や圧力、温度を考慮して行われます。ガスの流れがスムーズでなければ、ガスが逆流したり、流れが乱れて燃焼が不安定になったりするリスクがあります。
特に、大量のガスが一気に排出される異常時には、フレアヘッダーの容量が不足すると、ガスの流れが詰まる可能性があるため、フレアヘッダーのサイズや配管のレイアウトは、プラントの設計段階で慎重に検討されます。
フレアヘッダーは、通常時の排ガス処理だけでなく、緊急時の大量のガス処理にも対応する必要があるため、設計には十分な余裕が必要です。
◇フレアスタック
フレアスタックは、フレア設備の中で、最も目に見える部分であり、プラントの煙突のような構造物です。
フレアスタックは、排出された可燃性ガスを高い場所で燃焼させ、無害化して大気中に放出するための設備です。フレアスタックの先端には点火装置が取り付けられており、排出されたガスが自動的に点火されます。
フレアスタックの設計では、燃焼の安定性が重視されます。風の影響を受けにくい高さや形状が選ばれ、燃焼が安定するように設計されています。
フレアスタックの高さは、ガスの種類や燃焼時に発生する熱量、大気への影響を考慮して決定され、高い位置で燃焼させることで、地上の作業員や周辺の環境への影響を最小限に抑えることが可能です。
フレアスタックは、通常時に使用される常用フレアと、緊急時にのみ使用される緊急フレアの2種類があります。
緊急フレアは、異常時に発生する大量の可燃性ガスを処理するため、短時間での大量燃焼が求められます。フレアスタックの設計では、大量のガスが一度に流入しても安定した燃焼が維持できるよう、ガスの流れの調整や点火の自動化が行われています。
緊急移送処理設備の能力調査
画像出典:フォトAC
神奈川県では、平成29年度に石油コンビナート事業所を対象とした緊急移送処理設備の能力および運転管理に関する実態調査が行われました。
この調査は、プラントで発生する可燃性ガスを安全に処理するための設備が十分な機能を果たしているかを確認し、事業所の管理体制を評価するために実施されました。
出典元:神奈川県
資料:石油コンビナート事業所における緊急移送設備の能力 及び運転管理に係る実態調査結果
◇調査の目的
調査の目的は、異常時に発生する可燃性ガスを安全に処理するために必要な緊急移送処理設備の能力や、運転管理の実態を把握することです。可燃性ガスはプラントの異常時に大量に排出される可能性があるため、設備が適切に機能しなければ火災や爆発のリスクが高まります。
調査では設備の処理能力が十分か、運転管理が適切に行われているかを確認し、必要な改善点を明確にすることが求められました。
◇調査の概要
この調査は、神奈川県内にある石油コンビナートの事業所を対象に行われました。
調査内容は、緊急移送処理設備の設備能力、運転管理体制、設備の稼働状況の確認を含みます。
具体的には、各事業所が保有するフレア設備の設置状況や処理能力、非常時のガス排出処理の方法、設備の点検頻度や運転員の訓練状況が調査されました。
調査は、事業所へのヒアリングや資料の提出を通じて行われ、現地での設備の確認も行われました。
◇調査の結果
調査の結果、いくつかの課題が明らかになりました。一部の事業所では、想定される緊急時のガス排出量に対して、フレア設備の処理能力が不十分であることが確認されました。
処理能力が足りないため、ガスが適切に処理されず、事故が発生するリスクが指摘されました。特に、大量のガスが一度に排出される異常事態では、処理が追いつかない可能性があるため、設備能力の増強が求められました。
運転管理体制に関しては、運転手順書が不十分であったり、点検の頻度がばらついていたりする事業所が見受けられました。これにより、緊急時に適切な対応が取れない可能性があると判断され、管理体制の見直しが推奨されました。
また、運転員の訓練状況については、緊急時の対応訓練が十分に行われていないケースが確認されたため、異常時にオペレーターが正しい操作を行えない可能性があることから、訓練の実施や操作手順の明確化が求められました。
この調査を通して、緊急移送処理設備の処理能力の向上や、運転管理体制の強化が必要であることが明らかになりました。今後は、事業所が調査結果を踏まえ、設備の能力向上や運転員の訓練体制の整備を行うことが求められています。
設備の能力向上や訓練体制の整備により、火災や爆発などのリスクを低減し、より安全なプラント運用が可能です。
プラントにおける可燃性ガスの安全処理には、フレア設備が不可欠です。フレア設備は、異常時に発生するガスを燃焼させて安全に大気中へ放出する装置で、圧力を調整しながらガスを処理します。中心となるフレアスタックは自動点火機能を備え、高所で燃焼を行うことで安全性を確保します。
フレアシステムには、液体成分を除去するノックアウトドラムや急激な圧力変動を緩和するシールドラム、ガスを集めるフレアヘッダーも含まれます。緊急時の対応力が求められるため、設備の能力や運転管理体制の適正化が重要とされています。