蓄熱燃焼式排ガス処理装置とは?取り扱う企業を紹介
蓄熱燃焼式排ガス処理装置(RTO)は、揮発性有機化合物(VOC)を高温で酸化分解し無害化する装置です。排ガスを予備加熱してから800~1,000℃で完全に酸化し、浄化されたガスの熱を再利用することで高いエネルギー効率を実現します。
VOCを98~99%の効率で分解し、省エネ性に優れています。しかし、広い設置スペースが必要で運転開始に時間がかかる点や、有機シリコンやタール分の処理には注意が必要です。そのため、事前処理や定期的なメンテナンスが重要です。
目次
蓄熱燃焼式排ガス処理装置の仕組み
蓄熱燃焼式排ガス処理装置(RTO)は、排ガスに含まれる揮発性有機化合物(VOC)を酸化分解することで無害化する装置です。
◇原理
基本原理は、酸化反応によって有機化合物を二酸化炭素と水に分解するというものです。まず、排ガスを燃焼室に送り込み、そこで800°Cから1,000°Cの高温に加熱します。
この高温環境で、排ガス中のVOCが酸化反応を起こし、無害な成分に変換されます。この工程により、VOCの98%以上が効率よく除去されるのが特徴です。
◇仕組み
蓄熱燃焼式排ガス処理装置は、燃焼プロセスと熱回収の2つの工程から構成されています。
まず、排ガスは装置内の蓄熱体に通され、その蓄熱体から予備加熱を受けます。予熱されたガスは次に燃焼室に入り、高温で完全に酸化されます。このとき生成された高温の浄化ガスは、再度蓄熱体を通過する際にその熱を蓄熱体に移し、次に処理されるガスの予熱に利用されます。
このサイクルを繰り返すことで、エネルギー効率を最大限に高め、燃料の使用量を抑えることができるため、RTOは長時間の連続運転が求められる環境に適しています。
蓄熱燃焼式排ガス処理装置は、排ガス処理のコストを抑えつつ高い処理効率を維持するため、多くの産業で使用されています。
蓄熱燃焼式排ガス処理装置の特徴
◇処理できるVOC
蓄熱燃焼式排ガス処理装置は、幅広い種類の揮発性有機化合物(VOC)を処理する能力があります。具体的には、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルなどの芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、アルコール類が含まれます。
これらのVOCは、多くの産業プロセスにおいて排出され、環境汚染の原因となるため、適切な処理が必要です。
蓄熱燃焼式排ガス処理装置は、約98~99%の高効率でこれらのVOCを分解し、排出ガスを二酸化炭素と水に変換します。この高い処理効率により、装置はさまざまな産業分野での排ガス処理に適しています。
◇メリット
蓄熱燃焼式排ガス処理装置の最大のメリットは、高い熱回収率と燃料効率にあります。通常、熱回収率は85~95%に達し、これにより補助燃料の消費量が大幅に削減されます。
また、VOC濃度が1000ppm程度で自燃するため、燃料費の削減も期待できます。さらに、触媒を使用しないため、維持管理が容易で、触媒の交換コストやメンテナンスの手間が省けます。
◇デメリット
デメリットとしては、広い設置スペースが必要であり、装置の重量が重いため、設置に適した場所を確保する必要があります。
また、昇温に時間がかかり、運転開始までに時間がかかる点も考慮すべきです。特に、有機シリコン含有ガスには不向きであり、処理が困難な場合があるため、事前にガスの成分分析を行い、適切な対策を講じることが重要です。
蓄熱燃焼式排ガス処理装置を設置する際の注意点
蓄熱燃焼式排ガス処理装置を設置する際には、いくつかの重要な注意点があります。
◇タール分を含むガスの処理
タール分が多く含まれるガスが装置に流入すると、セラミックブロックの内部にタールが付着し、ブロックの閉塞を引き起こす可能性があります。これにより、排気ファンの消費電力が増加し、ランニングコストが高くなるリスクが生じます。
これを防ぐためには、装置の前段階でスクラバーなどの前処理装置を設置し、タール分を効果的に除去することが推奨されます。タール含有量が少ない場合でも、ベークアウト運転(空焼き運転)を行い、タール分を燃焼・除去することが有効です。
◇有機シリコンを含むガスの処理
有機シリコンが燃焼室内で燃焼すると、シリカが形成され、セラミックブロック内に付着する恐れがあります。シリカがブロック内に蓄積されると、装置の性能が低下し、最悪の場合、ブロックの交換が必要になることもあります。
有機シリコンがダスト状であれば、前処理装置での除去が可能ですが、ガス状の場合は除去が困難です。装置の長期運転を計画する際には、定期的なメンテナンスと適切なフィルタリング対策を講じることが重要です。
◇高温ガスの処理
自燃領域を超える高濃度のVOCをそのまま処理すると、燃焼室の温度が耐熱限界を超えてしまい、装置の損傷を招く可能性があります。このリスクを避けるためには、バイパス装置を利用して、排ガスの一部を直接煙突へ導くことで、燃焼室の温度を適切にコントロールする必要があります。
蓄熱燃焼式排ガス処理装置を取り扱う企業を紹介
蓄熱燃焼式排ガス処理装置を取り扱っている企業をご紹介します。
◇大気社
画像出典:大気社
大気社は、環境システム事業や塗装システム事業を通じて、国内外で幅広く活動している企業で、特に空調設備や塗装プラントの分野で高い評価を得ています。
環境保全のための技術開発にも力を入れており、その中でも「アドマットC」は、揮発性有機化合物(VOC)を効率的に除去する排ガス処理装置として知られています。繊維状活性炭を使用した吸着システムを採用しており、VOCを吸着・濃縮した後、酸化分解によって無害化します。
アドマットCの特徴は、活性炭の使用量が少なく、イニシャルコストとランニングコストを抑えながら高効率の排ガス処理を実現できる点です。さらに、装置全体がコンパクトに設計されており、設置スペースの制約がある現場でも導入が容易です。
◇新東工業
画像出典:新東工業
新東工業は、ものづくりを支える技術の提供に注力しており、環境関連技術の分野でも先進的な取り組みを行っています。
特に注目されるのが「デオサーモETSシリーズ」で、これは大風量の排ガスを効率的に処理する蓄熱燃焼式排ガス処理装置です。ETSシリーズは、塗装ブースやフィルム製造工程などで発生するVOCを高温で燃焼分解し、無害化します。
処理風量に応じた複数のモデルがあり、最大で毎分500立方メートルの排ガスを処理することが可能です。
また、ETSシリーズは、排ガス中に含まれるタール分やシリカなどの難処理物質にも対応できるように設計されており、独自のベイクアウトシステムを搭載しています。装置内の蓄熱体に付着したタール分を自動的に燃焼除去することで、装置のメンテナンスを簡素化し、長期間にわたる安定運用を可能にします。
◇中外炉工業
画像出典:中外炉工業
中外炉工業は、熱処理技術において長年の実績を持つ企業であり、環境保全に向けた大気浄化設備の分野でも高い評価を得ています。
同社が提供する「回転式蓄熱排ガス処理装置(R-RTO)」は、特に高い省エネルギー性能と処理効率を兼ね備えたシステムとして注目されています。蓄熱室が6〜8室に分かれており、排ガスを連続的に上昇流と下降流に切り替えることで、効率的な熱交換と安定したガス処理を実現します。
R-RTOは、フィルム製造ラインや化学工場などの厳しい条件下でも高い処理能力を発揮し、VOCを800℃以上の高温で燃焼分解して無害化します。
また、処理後の排ガスの熱を再利用することで、燃料消費を大幅に抑え、ランニングコストの削減に寄与します。
蓄熱燃焼式排ガス処理装置(RTO)は、揮発性有機化合物(VOC)を高温で酸化分解し無害化する装置です。排ガスは予備加熱されてから燃焼室に入り、800~1,000℃で完全に酸化されます。浄化されたガスは再び蓄熱体を通り、次の排ガスの予熱に使われるため、高いエネルギー効率を実現します。
蓄熱燃焼式排ガス処理装置は、トルエンやキシレンなど多様なVOCを約98~99%の効率で分解し、省エネ性と燃料効率が高いのが特徴です。
一方、広い設置スペースが必要で、運転開始に時間がかかるほか、有機シリコンやタール分を含むガス処理には注意が必要です。これらを防ぐための事前処理や定期的なメンテナンスが推奨されます。