触媒燃焼式排ガス処理装置を設置する際の注意点とは?取り扱う企業を紹介
触媒燃焼式排ガス処理装置は、揮発性有機化合物(VOC)を低温で効率的に分解し、二酸化炭素と水に変換します。通常は高温が必要なVOC分解を、触媒を用いることで200~400℃で実現し、省エネルギー性が高いのが特徴です。
排ガスを加熱し触媒層で酸化分解する過程でエネルギーを回収し、トルエンやキシレンなどのVOCを効果的に処理します。
目次
触媒燃焼式排ガス処理装置の仕組み
触媒燃焼式排ガス処理装置は、有害ガスを低温で無害化する装置です。触媒の働きで、通常より低い温度で揮発性有機化合物(VOC)や臭気を酸化分解し、二酸化炭素と水に変換します。燃料消費が少なく、省エネルギーが特徴です。
◇原理
VOCは炭素、水素、酸素から構成されており、通常は高温で燃焼させることで二酸化炭素と水に分解されますが、触媒燃焼では触媒を使用することで、これらの化学反応を低温で促進することが可能です。
この触媒には白金系やパラジウム系の金属が使われ、燃焼温度を650~800°Cから200~400°C程度まで低下させることができます。
◇仕組み
触媒燃焼式排ガス処理装置の仕組みは、まず排ガスを熱交換器で予熱し、その後、予熱バーナーや電気ヒーターでさらに加熱します。加熱された排ガスは触媒層を通過する際に、触媒の働きによってVOCが酸化分解されます。
この過程でVOCは無害な二酸化炭素や水に変化します。触媒層を通過した後の排ガスは、再び熱交換器を通り、エネルギーの一部が回収される仕組みになっています。
触媒燃焼式排ガス処理装置の特徴
◇処理できるVOC
触媒燃焼式排ガス処理装置は、揮発性有機化合物(VOC)の処理に非常に適しており、特にトルエンやキシレン、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)などの芳香族炭化水素やケトン類、アルコール類に対応しています。
これらのVOCは、多くの工業プロセスで発生するものであり、印刷業や塗装業、接着剤の使用が含まれます。処理風量は5~20 m³/分、処理濃度は500~3000 ppm程度で、装置内での分解率は95~99%以上に達します。
◇メリット
触媒燃焼式排ガス処理装置の最大のメリットは、低温でVOCを効率的に分解できる点にあります。通常、直接燃焼法では650~800°C程度の高温が必要ですが、触媒を使用することで200~400°Cの低温で分解が可能です。
この低温での処理では、燃料消費の削減と運転コストの抑制が可能な上、装置のサイズが小さくなるため、限られた設置スペースでも導入しやすいという利点があります。
◇デメリット
デメリットとしては、触媒の寿命が問題となる場合があり、シリコン化合物や有機リン化合物、硫黄化合物が微量でも触媒の劣化を早めてしまう可能性があります。
触媒のメンテナンスや交換が必要になるため、これにかかるコストや運転停止期間も考慮する必要があります。
また、触媒の種類や形状によっては、特定のガス成分への適応性に限界があるため、事前に処理するガス成分を十分に確認し、適切な対策を講じることが求められます。
触媒燃焼式排ガス処理装置を設置する際の注意点
触媒燃焼式排ガス処理装置を設置する際には、いくつかの重要な注意点があります。
◇化学物質の除去
シリコン化合物や有機リン化合物といった特定の化学物質に対する対応が必要です。これらの化合物は、装置の触媒に悪影響を及ぼし、寿命を短くする恐れがあります。
特に微量でも触媒性能を劣化させるため、フィルターを用いた前段階での除去が不可欠です。これにより、触媒が長期間効率的に機能し、安定した処理を行うことが可能になります。定期的なフィルター交換やメンテナンスを行うことが、触媒の長寿命化に貢献します。
◇触媒の焼き付けによる性能低下
装置内に蓄積されたヤニ成分やダストは、触媒に付着して焼き付けを引き起こし、装置の効率を低下させます。こうした影響を防ぐためには、ヤニやダストを効果的に除去するための前処理が求められます。
一般的にはスクラバーなどの前処理装置を設置し、処理プロセスの最適化を図ります。このような対策を取ることで、触媒の焼き付けを防ぎ、装置の長期的な運用を確保できます。
◇装置の不完全燃焼によるリスク
不完全燃焼が発生すると、二次的に有害な副生成物が排出される可能性があり、環境や作業者に悪影響を及ぼす恐れがあります。
特に装置の停止や再起動時には燃焼プロセスが不安定になりやすく、適切な対策が必要です。例えば、装置停止後に炉内温度が150°C以下になるまでアフターパージを行うことで、不完全燃焼のリスクを軽減できます。
触媒燃焼式排ガス処理装置を取り扱う企業を紹介
触媒燃焼式排ガス処理装置を取り扱っている企業をご紹介します。
◇サンレー冷熱(住友電工グループ)
画像出典:サンレー冷熱
サンレー冷熱は、住友電工グループの一員として、80年以上にわたる燃焼技術の経験と実績を誇り、排ガス処理装置を含む多様な環境装置を提供しています。
同社が提供する触媒燃焼式脱臭装置は、省エネルギー性能と高い脱臭効率が特徴です。
この装置は、排ガス中のVOC(揮発性有機化合物)や悪臭物質を、触媒を使用して比較的低温(250~350℃)で効率的に分解します。従来の直接燃焼式装置と比較して大幅な燃料費削減が可能です。
また、サンレー冷熱の触媒燃焼式装置は、完全燃焼と乾式処理を組み合わせているため、二次公害のリスクを低減し、廃水や汚泥の処理が不要になります。設置に際しては、装置の選定と燃焼プロセスの設計が重要で、これにより長期的な運用コストの削減と装置寿命の延長が期待できます。
◇TESSHA
画像出典:TESSHA
TESSHAは、触媒燃焼技術に特化し、さまざまな環境装置を製造・販売している企業です。
同社が提供する触媒脱臭装置「CU-7EH」は、特に多くの産業分野で利用され、高い評価を得ています。排ガス中のVOCや悪臭物質を、触媒を介して低温で効率的に酸化分解し、無害化します。
従来の直接燃焼式装置が700~800℃の高温を必要とするのに対し、TESSHAの装置は300~350℃の低温で酸化反応を起こすため、燃料消費を大幅に削減できます。
また、TESSHAの触媒脱臭装置には高効率の熱交換器が内蔵されており、さらに燃費を抑えることが可能です。特に、連続濃縮装置付きのモデルでは、装置全体のエネルギー効率を向上させつつ、処理能力を高めることができます。
◇旭化成エンジニアリング
画像出典:旭化成エンジニアリング
旭化成エンジニアリングは、さまざまな産業向けに高度なエンジニアリングソリューションを提供しており、その中でも触媒酸化式排ガス処理技術は特に注目されています。
同社の技術は、排ガス中のVOCを、触媒を用いて低温で酸化分解し、効率的に脱臭します。旭化成エンジニアリングの触媒酸化装置は、250~350℃の温度でVOCの酸化反応を開始し、燃料の消費を最小限に抑える設計がされています。
さらに、排ガス中のVOC濃度が高い場合には、助燃料が不要となり、自燃による運転が可能です。
また、装置はコンパクトな設計で、設置スペースを抑えることができるため、既存施設への導入も容易です装置の導入から運用・メンテナンスに至るまで、包括的なサポートを提供し、クライアントの環境課題解決を支援します。
触媒燃焼式排ガス処理装置は、有害ガスを低温で無害化するため、触媒を使い揮発性有機化合物(VOC)を二酸化炭素と水に変換します。VOCは通常高温で分解されますが、触媒により200~400℃の低温で処理可能です。この仕組みは、排ガスを加熱し触媒層で酸化分解するプロセスで、エネルギーの一部も回収します。
また、触媒燃焼式排ガス処理装置は省エネルギー性に優れ、トルエンやキシレン等のVOCを効率的に処理可能です。ただし、触媒の寿命や特定化学物質への対応が課題で、定期的なメンテナンスが必要です。また、設置時には不完全燃焼リスクや触媒の劣化を防ぐ対策が重要です。